軟部外科
一般外科で比較的多くある手術です。手術前には術前検査(血液検査やレントゲン検査、心臓評価など)を行い、麻酔リスク判定を必ず行います。また、外部の外科専門医を呼んで手術することもあります。
- 体表腫瘤切除 体の表面に出来たイボや腫瘍を切除します。切除する前に細胞診(細胞の検査)をしてから切除をすることがあります。また、切除したものを病理検査で調べることもできます。
- 乳腺腫瘍切除 乳腺に出来たしこりを切除します。乳腺の場合、基本的には細胞診で良性悪性を判別することは困難です。そのため、小さいものであれば、まずは完全切除をしてから病理検査をお勧めします。大きいものであれば、ニードルコアで組織を多めに採取し、それを病理検査に出してから切除範囲を決定することもあります。
- 膀胱結石 膀胱内に石があることで排尿困難や血尿になることがあります。その際は、膀胱を切開し膀胱内にある尿結石を除去します。オスの場合は尿道に石が詰まることがありますが、なるべく石を膀胱内に押し入れてからの手術になります。膀胱内に押し入れることが困難な場合は尿道を切開します。 手術後は摘出した結石を検査機関で分析して石の種類を確定します。その後は内科治療で経過を見ていきます。
- 子宮蓄膿症 子宮に膿が溜まる病気です。避妊していないメスに起こることがあります。早期発見ができれば避妊手術と同じレベルのリスクで手術ができますが、発見が遅れ状態が悪化すると手術をしても命を落とすことがあります。
- 会陰ヘルニア 去勢していないオスに起こります。お尻の筋肉が薄くなり、そこに穴が開いて内臓の一部がヘルニアを起こす病気です。その穴に腸が出ると排便困難(しぶり)を起こすことがあります。腹腔内の脂肪や膀胱もヘルニアを起こすことがあり、閉塞すると命に関わります。
- 椎間板ヘルニア 椎体と椎体の間にある椎間板のヘルニアが起こり、脊髄を圧迫し麻痺が起こる病気です。ヘルニアの部位によって麻痺が起こる部位は異なりますが、多く見られるのは胸腰部のヘルニアが原因の後肢麻痺です。状態によってグレード分類され、手術が推奨されるのはグレード4以上が一般的です。(グレード3から手術される先生もいます)手術の前に外部検査機関のMRI検査でヘルニア部位を確定し、それから手術になります。
異物誤飲
誤って異物を飲んでしまった場合、それが吐かせられる物であればまず催吐処置(吐かせる)をします。吐かせることが困難な場合(物が大きい、先が尖っている、数が多数ある、など)は、内視鏡を用いて摘出することを検討しますがそれでも結果的に胃切開や腸切開に至ることがあります。
誤飲してから時間が経過していると異物が腸内に移動することがあります。この場合は腸切開になるので胃を開けるよりも手術のリスクは高くなります。
*レントゲン検査や超音波検査、場合によってはバリウム検査を行い、異物の場所、大きさ、形を把握してから方向性を決めていきます。
*異物を飲んだ場合のご来院時は飲んだ物がわかる物をお持ちください。とても参考になります。
整形外科 担当医:安川慎二 獣医師、博士(獣医学)
小型犬は落下などで骨折することが多く、また、膝や股関節の遺伝性の病気も多いです。遺伝性の病気の場合は、動物のQOL(生活の質)が落ちるようであれば、やはり外科手術が必要になります。膝蓋骨脱臼などの整形外科手術は外科医のセンスが最も重要と言われており、当院では専門の整形外科医にお任せしております。
犬たちにとって「走ること」「遊ぶこと」は、生活の中でとても大切です。言葉を発することができない彼らが示すサインを的確に見極め、本当に手術が必要な場合には最高水準の治療をしてあげられるよう外科技術を研鑽してきました。
また、的確な診断や手術の適応の可否の判断だけでなく、まずは飼い主さんに大切な家族の病状をきちんと理解してもらうことも大切だと思っています。
足を痛めても、また元気に走れるように最良の治療を一緒に考えたいと思います。
経歴
- 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
- 神奈川県辻堂犬猫病院 勤務医
- 日本大学大学院 獣医外科学研究室(整形外科)
- DVMsどうぶつ医療センター横浜 整形外科
- 日本大学獣医外科学研究室 研究員
- Orthodex 代表
以下は整形外科では比較的多くある病気・手術です。
- 橈尺骨骨折 小型犬や元々骨が細くて折れやすい犬種によくあります。原因は落下などの外傷です。手術の方法は創外固定(外から固定する方法)か内固定(プレート固定)です。
⬅︎骨折部をプレート固定
- 膝蓋骨内方脱臼 小型犬(トイプードルやチワワなど)に多く、原因は生まれつき(遺伝的)がほとんどです。手術が適応になるかどうかは跛行(痛みや違和感で足を気にする様子)の程度や歩様の異様さで判断します。グレードによって手術の難易度も変わります。
⬅︎外れた膝蓋骨 ⬅︎手術後:正常な位置
- 股関節脱臼 元々股関節の形成不全(遺伝的)があり外れやすい状態にあった場合や、外傷で脱臼します。脱臼してすぐの場合は非観血的整復(手術ではなく手で治す方法)で治る場合がありますが、時間が経過していたり、原因が遺伝的なものだと観血的に整復する(手術すること)必要があります。
⬅︎赤矢印:脱臼した股関節
⬅︎手術方法はいくつかあり、症例ごとに適切な方法を選択します。考慮することは、基礎疾患の有無、手術時間、麻酔などへのリスク判定と術後の回復の早さの比較、飼い主様のご希望など。
- レッグペルテス(大腿骨頭壊死症) 遺伝的に発症します。虚血(血流が悪いこと)による大腿骨頭の壊死が起こり、痛みで足がつけなくなります。若齢期に発見されることがほとんどです。内科的に管理することも可能ですが、痛みが続く場合は大腿骨頭を切る手術が必要になります。
- 骨盤骨折 猫の交通事故で多く見られます。骨盤の骨折部位、折れ方、によって整復方法は様々です。問題となるのは骨折による骨盤狭窄で排便困難、排尿困難になることです。骨折した日から時間が経過していると手術の難易度も高くなります。